京都北部、宮津湾沿いの住宅街の一角。
レトロな外観とは裏腹に、プロジェクションマッピングで彩られたフランス料理を提供するお店があります。
今回は、fujiwara for elanvitalのプロジェクションマッピング×フランス料理が生み出す新たな世界をレポートしながら、フランス料理と宮津の食材の魅力を紹介します。
「小さなお子様がいるので、フランス料理は敷居が高い」
「記念日や誕生日のお祝いに、とっておきの体験をプレゼントしたい」
これらに当てはまる方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
レトロな木造家屋の一角に灯る「fujiwara for elanvital」

静かな住宅街の一角、どこか懐かしい雰囲気が漂う木造家屋の連なりを歩いていると、ひょっこり顔を出したのが、fujiwara for elanvitalの店主・藤原俊城さん。
店内は、友人の家に来たかのような落ち着く空間です。店内に足を進めると、テーブルには謎の言葉が並んだカードに不思議な箱、そして上品に包まれたナプキンが。

藤原さんによると、実はこの言葉がメニュー名なんだとか。
「フランス料理は難しい料理名が多く、名前を聞いただけではイメージできないものが多い。それならいっそ、料理をイメージした言葉をメニュー名にして、どんな料理が出てくるのかな?と想像を膨らませてもらおうと思いました。」
しかも順番はランダムなので、「次は何かな?」とワクワクする時間も楽しめそう。

そして気になるのが、この白い箱。「開けていいですよ」と言われて開けてみるものの、枡や白い錠剤のようなもの、そして可愛いスコップ型のスプーンなど、まるで見当がつきません。
そうこうしているうちに、早速一品目の準備ができたようです。
風物詩

店内が暗転し、キラキラとプラネタリウムのような光が煌めくと、花火が打ちあがる音が!
その途端に華やかな花火に変わり、大小さまざまな花火が一面に広がります。
花火大会のフィナーレを飾るスターマインの瞬間を再現したマッピングは、美しさに見とれてしまいます。
メニューは、栗と新玉ねぎを使ったピューレを野菜が入ったゼラチンでコーティングしたものだそう。上に乗っている可愛らしい天然石のようなものは、なんと飴細工。
プルンとした食感に、プチプチ・コリコリとする歯ごたえがなんとも愉快です。そしてまろやかな栗の甘さと野菜の旨みがマッチして、白ワインが進みますね。
花火は夏の風物詩という印象がありますが、宮津では冬にも花火大会が行われるんだそう。冬の澄んだ空気のなかに打ちあがる花火は、より一層際立って美しいでしょうね。
秘密
「次の料理では、箱の中にある枡とおしぼりを使います。枡におしぼりを入れてお待ちください。」との指示が。
準備して待っていると、なにやら和の音楽が流れてきて箱が置かれます。
プロジェクションマッピングの和柄と音楽に京都の古い街並みが思い浮かぶようで、ノスタルジックな気持ちになりました。
そして枡の中のおしぼりには、檜の香りが付いたお湯がかけられます。なんと、そのおしぼりで手をふくことで、手にまとった檜の香りが料理を仕上げるんだとか。
いざ、目の前に置かれた和柄の箱を開けようとするも、あれ?開かない…
これは寄木細工の秘密箱で、決まった手順でスライドさせないと開かないようになっているもの。
教えられたとおりにスライドさせると、不思議と開いていくではありませんか。
ただの箱と違って、開いたときの感動も大きいですね。


箱の中には、可愛らしい梅のパッケージにハート型の最中が入っていました。
これは、フォアグラのテリーヌに梅ジャムと小豆、そして生クリームを合わせたデザート感覚で楽しめる最中なんだそう。
「フォアグラに梅ジャムと生クリーム?」と意外な組み合わせでしたが、梅ジャムの優しい甘酸っぱさと、フォアグラのまろやかさ、生クリームが絶妙に溶け合い、キュンとする美味しさでした。
檜の香りのおしぼりといい、寄木細工のしかけといい、一つ一つに手が込んでいて、喜んでもらいたいという想いが感じられて嬉しいですね。
結晶


宝石がきらめいて輝かしい音楽のなか、宝石が広がるプロジェクションマッピングが幻想的です。そのなかに、負けじと輝くいくらが乗ったお料理が置かれます。
藤原さんが液体を入れたお皿に石をそっと入れると…
みるみるうちに白い結晶が雪のように広がっていくではありませんか。
不思議な感動に包まれたまま蓋を開けると、バルサミコや醤油、オリーブオイルで味付けされたアボカドとイサキの上に、みずみずしいイクラが乗った宝石のようなお料理が。
まろやかなアボカドと程よく歯ごたえのあるイサキ、そしてイクラの旨みが口の中で広がって、なんとも味わい深く感動的です。
一粒残さず丁寧に味わいたくなる一品でした。
幸運


四つ目は、穏やかな光に四つ葉のクローバーが揺らめき、ゆったりとした幸せを感じるプロジェクションマッピング。
丸い入れ物の蓋を開けると、可愛らしい卵やヒヨコ、そして四つ葉のクローバーが出てきました。
卵の器のなかには、綾部産の卵を使ったスクランブルエッグの中に、赤ワインソースがかかった鶏のハラミときのこが入り、横には四つ葉のクローバー型の抹茶のパイ生地が添えられています。
卵のクリーミーさとハラミの旨みが、赤ワインソースで口のなかで合わさるとすごく絶品!
パイをスクランブルエッグと一緒に食べると、抹茶の香りがフワッとプラスされて上品で和風の味わいに変化します。
まさに、芝生に寝転がって鳥のさえずりを聞いているような「幸運」のイメージにピッタリ。
天橋立

5つ目は、プロジェクションマッピングが始まった途端「天橋立だ!」とわかりました。
平安時代に小式部内侍が詠んだこの俳句は、天橋立を語るうえでは欠かせないほど有名です。
絵に見とれていると、なんと上り龍の形に彩られた食材の数々が!
宮津や与謝野で作られた新鮮な野菜と天橋立ハムには「ラビゴットソース」というトマトやきゅうり、玉ねぎを刻んだサッパリした味わいのソースがかけられ、宮津のオイルサーディンの上には、バジルソースがかけられています。
カブや赤カブ、トマト、そしてロマネスコなど新鮮な野菜がたっぷり入っていてどれもみずみずしく、香りが豊かで感動しました。

そして驚いたのが、置物だと思っていたバラの鉢。
土のように見える粉が、実はブラックオリーブだったんです。
振りかけて食べると、風味が加わってまた違った美味しさが生まれます。
これにも、「その土地の食材は、その土からできる」という意味が込められているんだそう。
節々に藤原さんの郷土愛や意図が込められていて、この細やかさと配慮の深さに何度も驚かされます。
兆し

ロマンチックな音楽のなか、たくさんの桜が咲き誇って舞い踊ります。
出されたお皿には、可愛らしい桜の花や木、そしてお魚が。
これは春の「兆し」をイメージしたものだそう。
左側が魚、右側が「春」をイメージしていて、漢字の「鰆」を表しているようにも見えますね。
訪れたのは2月下旬。まさに桜の開花を待ち望む、私達の心を映してくれているように感じます。
鰆の身は程よく弾力があり、素朴な味に添えられた海老のソースと桜エビのパウダーがよく合います。そして、下に敷かれたネギの甘さが、鰆の美味しさを引き立てていますね。

こちらも、途中で白い箱のなかにあったトリュフオイルをかけて味変ができます。
素朴な鰆の美味しさとソースにトリュフの香りがプラスされ、これもまた違った味わい深さが生まれます。
焚火

木の葉が舞い、火の粉がパチパチとはじけるような音と虫の鳴き声で、焚き火を連想します。
煙に包まれたお肉は、桜のチップで瞬間燻製された鹿肉なんだとか。
ジビエ料理はどうしても臭みが残るイメージですが、口にしてみると嫌な臭みが全くなく、むしろ牛肉を超える旨みが美味しくてジビエのイメージが覆りました。
これは、上世屋獣肉店のジビエで、丹後のなかでもダントツに良質なんだそう。
「こんなに美味しいのに、このあたりで上世屋獣肉店のジビエが食べられるお店が少ないのはもったいない」と思ったことも、藤原さんがお店を始めた理由の一つとのこと。
ちなみに、トマトソースは炎、炭のパウダーをまぶしたポテトは薪をイメージしたもの。真っ黒なので本当の炭に見えますが、食べてみると美味しいジャガイモだったので、これにもまた驚かされました。
分かち愛


最後のデザートは、なんとテーブルの上で実演。
宇宙をイメージさせる音楽に地球のプロジェクションマッピングが流れ、藤原さんがソースで星の動きを作っていきます。
すると丸い地球の形をしたチョコが登場し、割ると中にはお菓子やフルーツがたくさん!
中には、柚子を使ったマドレーヌや色とりどりのフルーツ、そして天橋立や股のぞきが描かれたクッキーなど宮津の魅力が溢れています。
「たくさんある地元のお菓子などを少しでも多く味わってもらえるように中に詰め込みました。美味しかったものをお土産に買ってもらえたら嬉しいです。」とのこと。
イチゴの酸味と地球をかたどっていたチョコのビターな甘み、そして周りに彩られたソースが美味しく贅沢なデザートです。
「分かち合って食べる」ことで、2人の愛を感じられるというのも素敵ですね。
一品目からデザートにいたるまで、一つ一つ丁寧に配慮されていて、お腹も心も満たされる料理の数々でした。
また、プロジェクションマッピングがあることで、「フランス料理だから静かに食べないといけない」と緊張することなく料理を楽しめることも魅力です。
そして食材の美味しさを引き立てる味付けは素晴らしく、家族の誕生日や友人との食事、両親へのお祝いなど、大切な人を喜ばせたいときに利用したいお店だと感じました。
fujiwara for elanvital、唯一無二の魅力

フランス料理にプロジェクションマッピングを組み合わせた斬新なスタイルは、藤原さんが以前勤めていた東京のフランス料理店「elanvital」から来ているんだそう。
elanvitalでお客様がプロジェクションマッピングを楽しみながら純粋に料理を楽しまれている姿を見て、感銘を受けたとのこと。
確かにフランス料理と聞くと、「正装してテーブルマナーを覚えてから行かなければいけないところ」というイメージをもつ方も少なくないでしょう。
そういったお店で食事をする体験も素敵ですが、小さな子供がいる方やテーブルマナーに自信がない方は、どうしても敬遠してしまいますよね。
fujiwara for elanvitalは1日1組限定で完全貸切のため、テーブルマナーや服装、そして周囲のお客様の目を気にせず食事ができます。
そして、藤原さんの料理やプロジェクションマッピングには、天橋立を始めとする丹後エリアの魅力が溢れています。
地元の方も知らない食材も使うことで、地元のお客様も「宮津にこんなに美味しい食材があったのか!」と驚かれるんだとか。
地元の美味しい食材を発掘して調理法を研究するだけでなく、その地の魅力を盛り込んだプロジェクションマッピングも丁寧に製作されています。
プロジェクションマッピングと料理、どちらが目立ちすぎてもアンバランスになってしまうため、このコース料理は藤原さんの至極の芸術作品とも言えますね。
藤原さんが思うフランス料理の魅力

もともと父が和食の料理人だったため、幼少期から和食の魅力は知っていたと語る藤原さん。
一方でフランス料理に触れる機会は少なく、フランス料理を初めて口にしたのは10代後半。そのときの複雑な美味しさが直球でぶつかってくる感覚に衝撃を受けたんだとか。
そんなとき、テレビで見たフランス料理の本場で活躍する料理人の姿に感銘を受け、いつしか彼が働いていた現場を見てみたいと思うように。
その後、都内のフランス料理店で経験を積みつつお金をためて渡仏し、修業した経験が今の藤原さんを支えているそう。
藤原さんのフランス料理への愛と宮津への郷土愛、そしてすべての人にその美味しさを知ってほしいという想いが、fujiwara for elanvitalに体現されているといえます。
fujiwara for elanvitalはオーダーメイドも自在

今では、fujiwara for elanvitalには観光客や地元の方、カップルから子供連れまで幅広いお客様が訪れています。
あらかじめ予算を掲示すれば、エビフライやハンバーグなどを盛り込んだお子様プレートもお願いできます。
もちろん、「子供にちゃんとしたフランス料理を食べさせたい」という方には、大人と同じメニューを出すことも可能。
このように、個別の要望に答えてくれるのは嬉しいですよね。
4名まで受付可能で、完全予約制です。
予約はInstagramのDMか電話、あるいはSMSで受け付けています。
料金は一律1名15,000円

高級なワインに1枚いくらかわからないトリュフのスライス…
特別なときに利用するからこそ高価なイメージがあるフランス料理は、予算に限りがある方は利用しにくいですよね。
fujiwara for elanvitalでは、ドリンク代も含めて1名15,000円と値段が決まっているため、会計金額にヒヤヒヤすることなく食事を楽しめます。
ドリンクは、アルコールとノンアルコールどちらも選択可能で、日本酒やワインの味の好みなどの希望を言えば、料理に合うものをペアリングしてくれます。
この値段設定にも、「若い方や今までコース料理を食べたことが無い方にも気軽に食事を楽しんでほしい」という藤原さんの想いを感じますね。
fujiwara for elanvitalの今後

フランス料理に魅入られ、クラシックから前衛的なフランス料理まで多様に経験を積んできた藤原さん。
今後は、「フランスの家庭料理をメインとした”おばんざい”を作るのもいいかも。」と胸をふくらませています。
テレビで活躍するフランス料理人の姿に感銘を受けた青年は、今や形式やジャンルを越えて、宮津の魅力を伝える「fujiwara for elanvital」という新たなジャンルを生み出しています。
今後も、fujiwara for elanvitalでしか味わえない料理と演出を生み出し、藤原さんが初めてフランス料理を口にしたときのような感動を多くの方に届けて頂きたいと思います。
fujiwara for elanvital 基本情報


fujiwara for elanvital 住所:京都府宮津市漁師1603 TEL:080ー5732ー5240 営業時間 ランチ:11:00~15:00 ディナー:18:00~22:00 定休日:不定休 Instagram:https://www.instagram.com/fujiwara_for_elanvital/ 参考:https://tabelog.com/kyoto/A2609/A260901/26038456/ |

