京都の代表的な町家「おおきに迎賓館」の魅力に迫る!黒門中立賣邸で見た京文化の深さを紹介 

おおきに迎賓館
  • URLをコピーしました!

京都で長年愛されてきた町家。

実は、一言に「町家」と言っても、商人の住居として用途を変えながら活用されてきたものから、和洋折衷のスタイルが特徴の洋館のようなものまでさまざまあります。

今回は、京都の代表的な町家である「おおきに迎賓館」黒門中立賣邸の魅力と、当時から大切に守られてきた京町家の建築美・文化について特集します。

併設する「ふく吉」についても紹介するので、昔ながらの町家で本場の寿司・和食を楽しみたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

目次

おおきに迎賓館とは―黒門中立賣邸と紫明出雲路邸

引用:https://geihinkan.ookini.jp/

京都御苑から車で10分弱、黒門通りの一角にあるのが、おおきに迎賓館黒門中立賣邸くろもんなかだちうりていです。

糸を売る糸屋だった時代から(西陣織の街らしいですね!)、料理屋や診療所などさまざまな用途に活用されてきました。敷地内には「ふく吉」があり、新鮮な魚介を使ったお寿司と一品料理が楽しめるのも魅力です。

そして、おおきに迎賓館には、もう一つの町家紫明出雲路邸しめいいずもろていがあります。

紫明出雲路邸は鴨川近くにある随筆家の邸宅で、数寄屋造りの古い町家に洋館が増設された、和洋折衷のスタイルが特徴的です。こちらにも、20年以上鮨と向き合ってきた生粋の料理人が生み出す鮨屋「鮨こんどう」があります。

どちらも文化体験演奏会イベント、展示会のほか、おもてなしの食事の場、そして宿泊施設としても活用されています。

書院を飾る梅の花と撫牛

ここからは、早速黒門中立賣邸に伺った様子を紹介していきます。

1階には、ふく吉のほか、風情ある庭が眺められる客室があります。室内の梁や壁など、昔の方々が使っていたものや習慣が随所に残されているそう。

例えば、書院です。

もともと書斎として使われていたところを書院と呼び、床の間や障子で間仕切りされているのが特徴です。

おおきに迎賓館

書斎として使われていた名残として、机だった場所にはすずり箱が置かれています。当時は、この中に紙や筆を入れて書き物をしていたそうですよ。

そしてそのすずり箱には、梅の花が描かれています。

訪れた2月下旬は、近くの北野天満宮で梅の花が咲き始め、「天神さんの梅開き」つまり梅苑「花の庭」が公開中であることに関連しています。

さらに、書院の床の間にはズラッと並ぶ撫牛の親子の姿が。

撫牛とは、撫でることでご利益を与えてくれると北野天満宮で信仰されてきたものです。

北野天満宮の御祭神・菅原道真が丑年生まれであり、牛を神の使いとして崇めていたことから、境内には表参道や楼門、手水舎などいたるところに撫牛が鎮座しています。

2月5日は北野天満宮の御祭神・菅原道真の命日でもあることから、書院で梅や撫牛を飾るというのもうなずけますね。

今年は撫牛達が円を描いていますが、真っ直ぐ整列していることもあるそうですよ。

おおきに迎賓館

さりげなく目線を上げると、床の間の上部に長い紐を垂らした袋があります。これは、訶梨勒かりろくと言い、お香や訶子かしの実が入った魔除けの袋なんだとか。

古来より、インドでは病を治す薬として使われてきた訶子の実や、他の生薬を調合し、魔を祓う効力を期待されてきました。日本にも、いつしかその習慣が仏教の伝来とともに伝わったと考えられます。

客室には、ほかにも菅原道真公のお姿や抹茶を点てる際に使う茶炉などがあり、趣のある空間が広がっています。

ふく吉につながる厨房には「おくどさん」

おおきに迎賓館
おおきに迎賓館

併設するふく吉の厨房には、「おくどさん」が並んでいます。

おくどさんとは、昔ながらのかまどを京都の方言で表した言葉。かまどを意味する「火処」や、煙の通り道「燻道」が訛って「くど」と呼ばれるようになりました。

「お」と「さん」を付けるのは、相手や対象物に親しみを込めて呼ぶ京都の方々の習慣から来ています。「お稲荷さん」や「お東さん」と呼ぶのもその例ですね。

昔はかまどに火をくべ、釜の中にお米を入れて炊いていたように、今でもふく吉では実際にこのおくどさんでお米を炊いてお寿司を提供しています。

かまどで炊き上げるお米は、一粒一粒がふっくらとして甘みと香りが引き立ち、鮮魚と相性抜群の味わいですよ。

Study!京の町家は「うなぎの寝床」が多い?!

うなぎ

京の町家のつくりの特徴を表す「うなぎの寝床」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

江戸時代の京都では、家の間口、つまり玄関の広さに応じて税金を徴収していたため、当時の方々は玄関の横幅を狭くして奥行きを取っていました。

その細長い間取りが、細い場所で寝るうなぎの寝床に似ていたことからそう呼ばれています。

そう考えると、玄関の横幅が広いところはお金持ちの家なのだなとわかりますね。ぜひ、京都の町家巡りをして、うなぎの寝床かどうか見比べてみてください。

節分にちなんだ掛け軸からも季節の趣を感じる

おおきに迎賓館

2階に上がろうと廊下に目をやると、泣きべそをかいている鬼の掛け軸大豆が置いてあるのを発見。

2月は節分の季節でもあることから、ひいらぎを見て家に入れず泣いている鬼の姿の掛け軸がかかっています。

万が一、家に鬼が入ってきたとしても、手前に大豆が置いてあるのできっと鬼は逃げていってしまうのでしょう。

この絵は江戸時代後期に名をはせた画家・松村呉春のもの。穏やかで上品なタッチゆえに、なんだか鬼が可哀想に思えてきてしまいますね。

鬼が柊や大豆を苦手とするのはなぜ?
鬼と柊と大豆

鬼がを苦手なのは、柊の見た目が理由です。柊の尖ったトゲが、目を刺すのではないかと恐れているんだそう。

また、大豆には精霊が宿っているため鬼退治に最適と言われています。柊や大豆のほかにも、ニオイの強い鰯の頭に柊を刺した柊鰯を飾り付けたり、豆まきに落花生を使ったりと、地域によってさまざまな風習があります。

地域ごとに、どのような節分の習慣があるのかを確かめてみるのも面白いですね。

人と人との「縁」を繋ぐ襖

おおきに迎賓館
おおきに迎賓館

2階に上がると、細かい刺繍が施された着物や、屏風が飾られた客室があります。障子の間から差し込む日の光も風情があって美しいですね。

そして広間には、美しく照らされた襖が癒しの空間を作り出しています。柄をよく見ると、たくさんの円が隠されているのがわかるでしょうか。

これは、和紙デザイナー堀木エリコ氏が人と人との「円=縁」が繋がりますように、という想いを込めて作ったんだとか。優しい光と相まって、心があたたかくなる素敵なデザインですよね。

職人の遊び心が随所に溢れる客室

おおきに迎賓館
おおきに迎賓館

奥の寝室へ進むと、白い壁に不思議な小窓があります。

窓を開けてみると、がぎっしり入っているではありませんか。この壁の中には、断熱防寒、湿度調整などの目的で藁が入っているんだそうです。

これは「ストローベイル」という建築技術の一つで、土壁に藁を入れて断熱や防寒、湿気吸収の役割を担ってくれるものなんだとか。

もともとアメリカから伝わった技術で、今では環境負荷が少なく省エネルギー効果も期待できるとして注目されています。

土壁や藁以外にも、お部屋には木材など自然の素材が天然の空気清浄機として活用されているのがわかります。先人の知恵を活かし、できるだけ自然のものを活用しようとする意識は見習いたいですよね。

ところで、この土壁にある小窓は、職人さんの遊び心で付いたものなんだそう。

職人さんが「ぎっしりと藁が入っていたら驚くだろうな」と想像しながら作った様子を思い浮かべると、なんとも愉快ですね。

ここには、ほかにも随所にそういった職人さんが施した細工や遊び心が詰まっています。建築に詳しくない方でも楽しめる見どころがたくさんありますよ。

ふく吉

おおきに迎賓館

京都の風情とモダンなアートが融合する店内では、一流の料理人が厳選した魚介を使った寿司一品料理が楽しめます。

ふく吉では、お寿司のコースや一品料理も合わせたおまかせコースを提供しています。

料理人の技術を見ながら食事を楽しめるオープンカウンターのほか、由緒あるお庭を眺めながら落ち着いて食事ができる個室もあり。

Check!壁にある名前のシールは何?

おおきに迎賓館

店内の壁には、舞妓さん芸妓さん花名刺が貼られています。丸型のものから縦長のもの、可愛らしい字体やデザインのもの、シンプルで大人っぽいデザインのものまでさまざま。

ふく吉には、舞妓さんや芸妓さんがお客様を連れてくることもあれば、プライベートと来られることもあるそうです。

舞妓さん・芸妓さんは、名刺として花名刺のほか、うちわを持ち歩くこともあるんだとか。愛用しているお店に、名刺を貼っていく習慣も素敵ですよね。

おおきに迎賓館 黒門中立賣邸を訪れて

おおきに迎賓館

今回は、おおきに迎賓館の商人の邸宅「黒門中立賣邸」を訪れた様子を紹介しました。

じっくりまわってみると、さりげなく置いてある装飾や展示品も細やかな意図が隠されていて、京都らしいおもてなしの心を感じました。

梅の花や節分に関連した展示も期間限定で、毎月のイベントに合わせて展示を変えているそう。3月は雛祭りや桜の季節なので、どのような展示になるか楽しみですね。

また、随所に職人さんが楽しみながら建築された様子がうかがえるのも印象的でした。

こちらでは、定期的に文化体験やイベントが開催されています。

「町家の日」イベントでは、室内で茶道伝統工芸品作り体験ができるので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

おおきに迎賓館 基本情報

黒門中立賣邸・ふく吉

おおきに迎賓館 黒門中立賣邸
引用:https://geihinkan.ookini.jp/kuromon
おおきに迎賓館 黒門中立賣邸
住所:京都府京都市上京区中立賣通黒門東入役人町
TEL:075-451-0092
HP:https://geihinkan.ookini.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/ookinigeihinkan/
予約:https://travel.rakuten.co.jp/HOTEL/180397/180397.html
※宿泊利用は要問い合わせ。
ふく吉
住所:京都府京都市上京区中立賣通黒門東入役人町
TEL:075-432-0092
営業時間 
※完全予約制
昼:11:30~14:00(L.O.13:30)
夜:18:00~23:00(L.O.22:30)
定休日:水・第一第三木曜日
HP:https://sushi-fukuyoshi.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/fuku_yoshi.official/

紫明出雲路邸・鮨 こんどう

おおきに迎賓館 紫明出雲路邸
引用:https://geihinkan.ookini.jp/shimei
おおきに迎賓館 紫明出雲路邸
住所:京都府京都市北区出雲路松ノ下町16番地
TEL:075-451-0092
HP:https://geihinkan.ookini.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/ookinigeihinkan/
予約:https://geihinkan.ookini.jp/contact
鮨 こんどう
住所:京都府京都市北区出雲路松ノ下町16番地
TEL:075-257-0092
HP:https://sushi-kondo.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/sushikondo_kyoto/

MATSUMURA
JAPANOPIA編集部ライター
ライター歴6年。兵庫生まれで学生時代はアメリカやインド、タイ、台湾などを訪れ、日本と文化の違いを楽しむ。
京都の茶筒「開化堂」や切り絵作家 早川鉄兵氏が作品を通して伝統技術を今に伝える活動に感銘を受けてからは、日本の伝統技術に興味。
今では、主に京都や滋賀、兵庫エリアの穴場スポットや地元の人に愛される名店などをもっと知ってほしい!そんな想いで取材や調査を行い、リアルで詳しい情報を提供しています。
歴史や伝統文化、日本ならではのしきたりも、背景を知ればもっと面白い!
「そこに行ってみたい!」「体験してみたい!」と思ってもらえるように日々記事を執筆中です。
SHARE
  • URLをコピーしました!
目次